ソーシャルファーム

ソーシャルインクルージョン※の理念のもとに、障害のある人や何らかの理由で働きたいのに働けないでいる労働市場で不利な立場の人たちを雇用するためにつくられた新たなビジネス形態です。イタリアの精神病院解体により、地域に放り出された精神障害者に対して新たな働く場づくりが必要になったことから始まったといわれています。

現在ではヨーロッパ全土やイギリスで発展してきており、2万社を超えています。韓国でも新しい雇用創出施策として制度化されました。
その特徴としては、
①障害のある人や労働市場で不利な立場の人たちを相当数雇用している
②企業と同じビジネス手法
③利益を事業そのものに還元する
④すべての労働者は同等の権利と義務をもつ
⑤地域の活性化に貢献でき、住民との関係づくりにもつながる
などがあげられます。

わが国でも、2008年にソーシャルファームの発展を支援することとネットワークづくりを目的に、「ソーシャルファームジャパン」(代表:炭谷茂氏)
が設立され、現在全国に2000社設立を目標として活動しています。

※ソーシャルインクルージョン 社会的包摂。全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合うという理念。

日本的ソーシャルファームの問題点

日本においては、大手企業〈親会社〉の特例子会社としてソーシャルファームが設立され、管理運営を一括して管理会社に委託している場合がほとんどです。その社員は親会社の社員となり、賃金・身分が保証されます。これによって、親会社は障害者法定雇用率をクリアするわけです。
親会社から分離された、いわば〈ムラ〉として特例子会社が作られ、親会社と子会社の社員間のコミュニケーションはありません。さいたま市では独自に指針を作成し、「一般企業への就労が困難な障害者が生きがいのある充実した生活をおくるため、障害のない方と共に働く場」としました。障害者が一緒に働くのは、管理会社の障害のない管理者であり、はたして、これが社会的包摂と言えるのか、疑問があります。